【運動器と機能性医学】第8回 骨粗鬆症はなぜ気づきにくい? 骨折する前に知っておきたいこと

08 骨粗鬆症はなぜ気づきにくい? 骨折する前に知っておきたいこと

第8回 骨粗鬆症はなぜ気づきにくい? 骨折する前に知っておきたいこと

骨粗鬆症という言葉は、多くの方が一度は聞いたことがあると思います。
でも、「自分にはまだ関係ない気がする」「痛くなったらわかるはず」と感じている方も少なくありません。

実は、骨粗鬆症がやっかいなのは、かなり進むまで自分では気づきにくいところです。
前回までで、骨は体を支えるだけではなく、血液や体の中の調整にも関わる組織だ、というお話をしてきました。
今回はその続きとして、なぜ骨粗鬆症が見つかりにくいのか、そして骨折する前に何を知っておいたほうがよいのかを、できるだけ平易な日本語で整理します。


骨粗鬆症は、痛みで始まる病気ではありません

多くの病気は、どこかが痛い、熱が出る、違和感がある、という形で気づくことがあります。
ところが骨粗鬆症は、そうではないことが多い病気です。

骨が少しずつ弱くなっていても、ふつうはそれだけで強い痛みは出ません。
そのため、本人は何も変わっていないように感じたまま、静かに進んでしまうことがあります。

だから骨粗鬆症は、「気づきにくい病気」「静かに進む病気」と言われます。
転んで手首を骨折した、背骨がつぶれて強い背中の痛みが出た、足のつけ根の骨が折れた。
そうなって初めて、「実は骨がかなり弱っていた」とわかることが少なくありません。


なぜ気づきにくいのでしょうか

理由は、骨が弱くなっていく途中では、自分では変化を感じにくいからです。

たとえば血圧が高い人でも、自覚症状がないことがあります。
骨粗鬆症も少し似ています。
体の中では変化が進んでいても、毎日の生活ではそれをはっきり感じないことがあります。

しかも、年齢を重ねると
・疲れやすい
・筋力低下を感じる
・体力低下がある
・歩く量が減る
・姿勢が変わってくる
といった変化が出やすくなります。
すると、骨の変化があっても「年齢のせいかな」で流されやすくなります。

つまり骨粗鬆症は、症状が少ないうえに、年齢とともに起こる別の変化の中にまぎれやすいのです。


骨折して初めてわかることが多いのです

骨粗鬆症でとくに問題になるのは、「ちょっとしたきっかけで骨が折れやすくなる」ことです。

たとえば、
・立った高さから転んだだけ
・軽く手をついただけ
・重い物を持った
・せきやくしゃみのあとに背中が痛くなった
こうしたことをきっかけに骨折することがあります。

健康な骨なら折れにくい程度の力で骨折する場合、それは骨の弱りの手がかりになることがあります。
こうした骨折は、骨の強さが落ちているサインとして大切です。

とくに背骨の骨折は見逃されやすいと言われます。
強い背中の痛みだけでなく、
・身長が低くなった
・背中が丸くなってきた
・前より姿勢が変わった
という形で出ることもあるからです。


見た目ではわからないから、検査が大切です

骨の状態は、見ただけではわかりません。
そのため、骨の強さを知るには検査が大切になります。

中心になるのは、骨密度を測る検査です。
この検査では、骨の中にどれくらい材料がしっかりあるかをみて、骨折しやすさの目安を調べます。
とくに腰の骨や足のつけ根の骨は、骨折すると生活への影響が大きいので、よく調べられる場所です。

大事なのは、「痛くなってから受ける検査」ではなく、「気づきにくいからこそ、必要な人は早めに確認する検査」だということです。
症状がないから大丈夫、ではなく、症状がないまま進むことがあるからこそ検査に意味があります。


どんな人が気をつけたほうがよいのでしょうか

骨粗鬆症はだれにでも起こりえますが、とくに気をつけたい条件があります。

たとえば、
・更年期以降の女性
・年齢を重ねてきた方
・やせ気味の方
・家族に骨粗鬆症の人がいる方
・食事量が少ない方
・無理なダイエットをくり返してきた方
・外に出ることが少ない方
・あまり歩かない方
・筋力低下が目立つ方
・長く薬を使っている方
などです。

もちろん、これに当てはまるから必ず骨粗鬆症というわけではありません。
ただ、当てはまるものが多いほど、一度きちんと見ておく価値はあります。


更年期以降は、とくに“静かに進みやすい時期”です

女性では、更年期以降に骨の量が減りやすくなります。
女性ホルモンの変化が大きく関わるからです。

しかもこの時期は、
・眠りが浅い
・疲れやすい
・体力低下がある
・筋力低下を感じる
・運動量が減る
・ダイエットで食事が偏る
といったことも重なりやすい時期です。

すると、骨にとってよくない条件がいくつもそろいやすくなります。
それでも骨そのものは静かに変わるので、本人は「何となく弱ってきた」くらいにしか感じないことがあります。

だから更年期以降は、
「痛くないから大丈夫」
ではなく、
「何も感じなくても、一度は骨のことを考えてみる」
という視点がとても大切です。


体重が軽いことが、必ずしも安心ではありません

ここは意外に思われる方が多いところです。

体重が軽いと、見た目には健康的に見えることがあります。
でも、食事量が少ない、たんぱく質が足りない、筋肉まで落ちている、という状態だと、骨にとってはよくないことがあります。

とくにダイエットで体重だけを落とそうとすると、脂肪だけでなく筋肉や骨にとって大事な土台まで弱くなってしまうことがあります。
「やせたのに元気がない」
「前より疲れやすい」
「少し動くとしんどい」
という方は、体重の数字だけではなく、中身がどう変わったかを見ることが大切です。

骨粗鬆症は、見た目の細さや太さだけではわかりません。
だからこそ、食べ方、動き方、筋肉の保ち方まで一緒に見る必要があります。


骨折は、その場だけの問題ではありません

骨折すると、もちろんその場所が痛くて困ります。
でも本当に大きいのは、その後です。

痛みで動けなくなる

歩く量が減る

筋肉が落ちる

体力低下が進む

さらに転びやすくなる

この流れが起こると、骨折は単なる一回のけがでは終わらなくなります。
とくに足のつけ根の骨や背骨の骨折は、その後の生活に大きく影響しやすいことで知られています。

ですから、骨粗鬆症は「折れたら大変」というより、「折れる前に見つけて、できることを始める」ことがとても大切です。


当院が“骨折する前に考えること”を大切にしている理由

当院では、痛みのある場所だけをみるのではなく、その方の回復の土台を大切にしています。
骨もその一つです。

骨粗鬆症があるかどうかだけでなく、
・食事は足りているか
・たんぱく質は足りているか
・日光に当たる機会はあるか
・歩けているか
・筋力低下が進んでいないか
・更年期以降の変化が重なっていないか
・無理なダイエットで弱っていないか
を一緒に見ていきます。

また、女性施術者として、出産や育児を経験してきた立場から、「自分のことは後回しになりやすい」という現実もよくわかります。
だからこそ、理想を押しつけるのではなく、今の暮らしの中で続けられる形を一緒に考えることを大切にしています。

対面だけでなく、全国の方への画面越しの相談でも、骨を“骨折の問題だけ”にしない視点を、わかりやすくお伝えしていきたいと思っています。


まとめ

骨粗鬆症が気づきにくいのは、かなり進むまで自覚しにくいからです。
痛みがないまま進み、骨折して初めてわかることも少なくありません。

だからこそ大切なのは、
・更年期以降の変化を軽く見ない
・疲れやすさや筋力低下を年齢だけで片づけない
・必要な人は骨密度を測る検査を考える
・骨折する前に生活を見直す
ことです。

骨粗鬆症は、静かに進む病気です。
でも、静かに進むからこそ、早めに気づく意味があります。

次回は、「骨粗鬆症になりやすい人の特徴とは? 骨量低下のリスク要因をやさしく解説」というテーマで、どんな条件が重なると骨が弱りやすいのかを、もう少し整理していきます。


参考文献

Osteoporosis Causes, Risk Factors, & Symptoms
Osteoporosis: Diagnosis, Treatment, and Steps to Take
Bone Mineral Density Tests: What the Numbers Mean
Preventing Another Broken Bone
Screening for Osteoporosis to Prevent Fractures: An Evidence Review for the U.S. Preventive Services Task Force
The clinician's guide to prevention and treatment of osteoporosis


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