【その栄養学、もう古い!】第1回 “足りないから足す”はもう古い 戦後型栄養指導から抜け出すために

01 “足りないから足す”はもう古い

第1回 “足りないから足す”はもう古い 戦後型栄養指導から抜け出すために

「マグネシウムが足りないから、マグネシウムを飲みましょう」
「鉄が低いから、鉄を足しましょう」
「ビタミンB群が足りないから、サプリを増やしましょう」

栄養療法や分子栄養学の世界では、このような説明を耳にすることがあります。

もちろん、栄養素が不足している人に、必要な栄養を補うこと自体が悪いわけではありません。実際に、明らかな欠乏がある場合や、食事だけでは追いつかない場合、医師の管理のもとで栄養補充が必要になることもあります。

けれども、慢性的な不調に悩んでいる方を見ていると、私はいつも一つの疑問を感じます。

それは、

「なぜ、その栄養素が足りなくなったのか?」

という視点です。

足りないから足す。
症状があるからサプリを入れる。
検査値が低いから補充する。

この考え方は、一見すると理にかなっているように見えます。しかし、それだけで終わってしまうと、薬の名前がサプリに変わっただけになってしまうことがあります。

頭痛にはこのサプリ。
不眠にはこのサプリ。
疲労にはこのサプリ。
便秘にはこのサプリ。
貧血にはこのサプリ。

これでは、「症状を見て薬を出す」という発想と、あまり変わらなくなってしまいます。

神戸市北区・三田市周辺でも、健康意識の高い女性ほど、すでにいろいろなサプリを試している方が少なくありません。けれども、「飲んでいる間は少し楽だけど、やめると戻る」「どんどんサプリが増えていく」「何が効いているのか分からなくなってきた」という声もよく聞きます。

今回からのシリーズでは、サプリメントを否定するのではなく、サプリに頼りすぎる前に必要な「体の見方」について、機能性医学の視点からお伝えしていきます。


「足りないから足す」は、戦後には必要な考え方だった

少し強い言い方になりますが、

「足りないから足す」は、戦後型の栄養指導です。

戦後の日本では、食料そのものが不足し、栄養失調が大きな問題でした。十分なカロリーが取れない。タンパク質が足りない。ビタミンやミネラルが足りない。そうした時代には、まず「足す」ことが命を守るために必要でした。

その時代の栄養指導は、とても大切な役割を果たしてきました。ですから、戦後の栄養指導そのものを否定しているわけではありません。

問題は、現代の慢性不調に対しても、同じ発想だけで見てしまうことです。

今の日本では、もちろん栄養不足の方もいます。特に、食事量が少ない女性、過度なダイエットをしている方、胃腸が弱くて食べられない方、高齢の方では、低栄養が問題になることもあります。

一方で、現代の慢性不調は、単純な「栄養が足りない」だけでは説明できないことが多くなっています。

・食べているのに、吸収できていない
・栄養を入れても、うまく使えていない
・ストレスや睡眠不足で、消耗が増えている
・血糖の乱れで、体に負担がかかっている
・腸内環境や炎症の問題で、体が過敏になっている
・薬剤や生活習慣の影響で、栄養状態が乱れている
・そもそも、食品の質や食べ方に偏りがある

このように、現代の不調では「不足しているかどうか」だけではなく、「なぜ不足したのか」「なぜ使えないのか」「なぜ消耗しているのか」まで見なければ、本当の意味で体を立て直すことは難しくなります。


マグネシウム不足と言われたとき、本当に見るべきこと

たとえば、マグネシウムを例に考えてみましょう。

マグネシウムは、筋肉や神経、エネルギー代謝などに関わる大切なミネラルです。足がつりやすい、筋肉がこわばる、頭痛がある、眠りが浅い、便秘気味、ストレスに弱い。こうした状態から「マグネシウム不足かもしれません」と言われることがあります。

たしかに、マグネシウムが不足している方もいます。食事の偏り、加工食品の増加、野菜・豆類・海藻・種実類の不足などが関係することもあるでしょう。

しかし、そこで「では、マグネシウムのサプリを飲みましょう」だけで終わってよいのでしょうか。

本当に見るべきなのは、次のような背景です。

・そもそも食事から十分に取れているのか
・胃腸の働きが落ちて、吸収しにくくなっていないか
・下痢や軟便が続いて、失いやすくなっていないか
・強いストレスや睡眠不足で、消耗が増えていないか
・血糖の乱れや慢性炎症が、体に負担をかけていないか
・利尿薬や胃酸を抑える薬など、薬剤の影響はないか
・腎臓からの排泄に問題はないか
・カフェインやアルコールの取り方はどうか

つまり、マグネシウム不足を見るときに大切なのは、マグネシウムそのものだけではありません。

「マグネシウムが不足しやすい体の背景」を見ることです。

ここを見ずにサプリだけを足すと、飲んでいる間は少し楽になっても、根本的には同じ状態をくり返してしまうことがあります。


栄養素を足すことと、体を立て直すことは違う

栄養素を足すことは、場合によっては必要です。

ただし、それは「体を立て直すための一部」であって、すべてではありません。

慢性疲労、頭痛、めまい、胃腸の不調、便秘、下痢、冷え、睡眠の乱れ、更年期の不調、自律神経の乱れなどは、一つの栄養素だけで説明できるほど単純ではないことが多いです。

たとえば、疲れやすいからビタミンB群を飲む。
けれども、本当は睡眠不足が続いているかもしれません。

鉄が少ないから鉄を飲む。
けれども、本当は胃酸が少なくて吸収できていないのかもしれません。

タンパク質が足りないからプロテインを飲む。
けれども、本当は胃腸が弱くて、プロテインでお腹が張っているのかもしれません。

腸にいいから乳酸菌や食物繊維を取る。
けれども、本当は小腸でガスが増えやすい状態で、かえって苦しくなっているのかもしれません。

このように、「よいもの」でも、体の状態や順番を間違えると合わないことがあります。

栄養カウンセリングで大切なのは、何を足すかだけではありません。

・今の体は、何を受け入れられる状態なのか
・何を先に整えるべきなのか
・胃腸、血糖、睡眠、自律神経、炎症のどこに負担があるのか
・サプリを使うとしても、どの目的で、どの期間、どの程度使うのか
・最終的に、サプリを減らせる体を目指せるのか

こうした視点が必要です。


栄養を「成分」だけで見ない

分子栄養学の考え方には、役に立つ部分もあります。栄養素の働きを細かく見ることは、体を理解するうえで大切です。

しかし、栄養を成分だけで見すぎると、人の体全体が見えにくくなります。

食品は、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂質、糖質だけでできているわけではありません。食物繊維、ポリフェノール、発酵性の成分、食品の構造、調理法、食べ合わせ、食べる時間、噛む回数、食事をする環境など、さまざまな要素が重なっています。

さらに、人の体も単なる「栄養素の入れ物」ではありません。

胃腸で消化し、腸で吸収し、肝臓で処理し、細胞で使い、不要なものを排泄し、自律神経やホルモンがその流れを調整しています。

ですから、体を本当に見るなら、

「何が足りないか」

だけではなく、

「なぜ足りなくなったのか」
「なぜ吸収できないのか」
「なぜ使えないのか」
「なぜ消耗しているのか」

を見ていく必要があります。

機能性医学では、このような背景を大切にします。症状だけを見るのではなく、体のシステム全体を見ながら、慢性不調の背景にある要因を探っていきます。


サプリを否定しているのではありません

ここまで読むと、「サプリは全部だめなのですか?」と思われるかもしれません。

そうではありません。

サプリメントは、必要な人に、必要な目的で、必要な期間使えば、体を支える助けになることがあります。食事だけでは足りない場合、明らかな不足がある場合、消化吸収の問題があり一時的に補助が必要な場合など、サプリが役立つ場面はあります。

ただし、サプリを使うことと、サプリに依存することは違います。

本来、栄養カウンセリングで目指したいのは、「サプリを増やすこと」ではありません。

目指したいのは、体が本来のリズムを取り戻し、食事・睡眠・胃腸・血糖・自律神経・炎症のバランスが整い、必要以上にサプリに頼らなくてもよい状態に近づけていくことです。

もちろん、病気の治療中の方、薬を服用中の方、妊娠中・授乳中の方、腎臓病や心臓病などがある方は、自己判断でサプリを増やしたり中止したりするのは避けてください。必要な場合は、医師や専門職に相談しながら進めることが大切です。


現代の慢性不調に必要なのは「根本を見る栄養カウンセリング」

神戸市北区・三田市周辺で鍼灸院や整体、栄養カウンセリングを探している方の中には、すでに病院で検査を受けても「異常なし」と言われ、それでもつらさが残っている方が多くおられます。

そのような方に必要なのは、単に「この症状にはこのサプリ」という話ではないと感じています。

必要なのは、体の背景を一緒に整理することです。

・食事の内容
・食べる時間
・胃腸の働き
・便通
・睡眠
・ストレス
・血糖の乱れ
・月経や更年期の変化
・運動量
・薬剤やサプリの使用状況
・過去の体調の変化
・自律神経の状態

こうした情報を丁寧に見ていくと、「足りない栄養素」だけでは見えてこなかった体の流れが見えてくることがあります。

当院では、鍼灸や手技だけでなく、機能性医学の考え方も取り入れながら、慢性的な不調の背景を一緒に整理していくことを大切にしています。

「何を飲めばいいですか?」の前に、
「なぜ今の体になっているのか?」を考える。

この視点が、これからの時代の栄養カウンセリングには必要だと考えています。


まとめ

「足りないから足す」は、戦後の栄養失調時代には必要な考え方でした。

しかし、現代の慢性不調は、それだけでは説明できないことが多くなっています。

栄養素を足す前に、なぜ不足したのかを見る。
サプリを増やす前に、体が栄養を使える状態かを見る。
検査値だけではなく、胃腸、睡眠、血糖、自律神経、炎症、生活背景を見る。

それが、現代に必要な栄養カウンセリングだと考えています。

サプリを否定するのではありません。
ただ、サプリで考えることを止めてはいけないのです。

次回は、「そのサプリ、本当に必要ですか? 症状から栄養素を決める危うさ」というテーマで、症状だけを見て栄養素を決めてしまうことの問題について、さらに詳しくお伝えします。


参考文献

Perspective: Reductionist Nutrition Research Has Meaning Only within the Framework of Holistic and Ethical Thinking

Exclusive reductionism, chronic diseases and nutritional confusion: the degree of processing as a lever for improving public health

Nutrition Policy in Japan to Leave No One Behind

Diet, nutrition and the prevention of chronic diseases: report of a joint WHO/FAO expert consultation


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