【なんでも腸が悪い屋さんに注意!】第4回 “とりあえずグルテンフリー”に注意。除去食の前に確認すべきこと

04 “とりあえずグルテンフリー”に注意。除去食の前に確認すべきこと

第4回 “とりあえずグルテンフリー”に注意。除去食の前に確認すべきこと

「リーキーガットかもしれないので、まずグルテンフリーにしましょう」

このように言われたことはありませんか。

小麦を抜く。
パンをやめる。
麺類をやめる。
お菓子をやめる。
グルテンを避ける。

たしかに、それで体調が楽になる方はいます。お腹の張りが減る、便通が整う、眠気が軽くなる、肌の調子がよくなる、頭がすっきりする。そう感じる方がいることは否定しません。

けれど、ここで大切なのは、「グルテンフリーで楽になる人がいる」ということと、「不調がある人は、まず全員グルテンフリーにすればよい」ということは、まったく別だということです。

特に最近は、リーキーガット、腸活、機能性医学、栄養療法という言葉と一緒に、「小麦を抜きましょう」「グルテンは腸に穴を開けます」「慢性不調の人はグルテンフリーが基本です」という説明が広がっています。

しかし、これはかなり慎重に扱うべき話です。

なぜなら、除去食は、うまく使えば助けになりますが、安易に使えば、診断の機会を逃したり、栄養不足を深めたり、食事への不安を強めたりすることがあるからです。

今回お伝えしたいのは、「グルテンフリーは悪い」という話ではありません。

必要な人には、グルテンフリーはとても大切です。

問題は、必要かどうかを見立てないまま、「とりあえず」で始めてしまうことです。


“とりあえず抜く”は、専門的に見えて思考停止になることがあります

食事指導では、「何を食べるか」と同じくらい、「何を抜くか」が注目されます。

小麦を抜く。
乳製品を抜く。
卵を抜く。
砂糖を抜く。
発酵食品を抜く。
カフェインを抜く。
ナッツを抜く。
大豆を抜く。

たしかに、特定の食品が症状に関係していることはあります。食物アレルギー、セリアック病、非セリアック小麦過敏、IBS、SIBO、FODMAPへの反応、ヒスタミン不耐のような状態では、食事の影響を考えることは大切です。

しかし、「不調があるから、まず抜く」という発想だけでは危険です。

なぜなら、除去食は原因を明らかにする道具にもなりますが、使い方を間違えると、何が原因だったのかをかえって見えにくくするからです。

たとえば、小麦を抜いて体調がよくなったとします。

そのとき、本当にグルテンが原因だったのでしょうか。

それとも、パンや麺を減らしたことで、食べ過ぎが減ったのでしょうか。
菓子パンやクッキーを減らして、砂糖や油が減ったのでしょうか。
小麦に含まれるフルクタンという発酵性糖質が減ったのでしょうか。
外食や加工食品が減ったのでしょうか。
血糖の乱れが少なくなったのでしょうか。
食事全体を丁寧にするようになったことで楽になったのでしょうか。

ここを分けずに、「やっぱりグルテンが悪かった」と言うのは、あまりにも短絡的です。

食事指導で大切なのは、抜いた結果だけを見ることではありません。

なぜ変化したのかを考えることです。


セリアック病を確認する前のグルテンフリーには注意が必要です

グルテンフリーを考えるうえで、必ず知っておきたいのがセリアック病です。

セリアック病は、グルテンに対する免疫反応によって、小腸の粘膜に障害が起こる自己免疫性の疾患です。診断された場合、厳格なグルテンフリー食が治療の中心になります。

日本では欧米ほど多くないとされますが、慢性的な下痢、体重減少、腹部膨満、鉄欠乏、原因不明の貧血、骨密度低下、口内炎、家族歴などがある場合には、医科での評価が必要になることがあります。

ここで問題になるのが、「先にグルテンフリーを始めてしまうこと」です。

セリアック病の血液検査や内視鏡検査は、基本的にグルテンを摂取している状態で行う必要があります。自己判断で先にグルテンを抜いてしまうと、あとから検査をしても結果がわかりにくくなることがあります。

すでにグルテンフリーをしている人が診断を受けようとすると、医師の管理のもとで一定期間グルテンを再摂取する「グルテンチャレンジ」が必要になる場合もあります。これは本人にとって負担になることがあります。

つまり、「体に良さそうだから、まずグルテンフリー」は、場合によっては大切な診断の機会を遅らせる可能性があります。

栄養カウンセラーや代替医療家が、ここを考えずに「リーキーガットだからグルテンフリー」と言ってしまうのは、かなり危うい指導です。

グルテンフリーは、必要な人には重要です。

しかし、必要な人を見落とさないためにも、始める前に医科的に確認すべきことがあるのです。


小麦で不調が出る理由は、グルテンだけではありません

小麦を食べるとお腹が張る。
パンを食べると眠くなる。
麺を食べると胃が重い。
パスタの翌日に便通が乱れる。
菓子パンを食べると肌荒れする。

こうした訴えがあると、すぐに「グルテンが原因です」と言われることがあります。

しかし、小麦で不調が出る理由はグルテンだけではありません。

小麦には、グルテン以外にも、フルクタンと呼ばれる発酵性糖質が含まれています。これはFODMAPの一種で、腸内で発酵しやすく、人によってはガス、腹部膨満、腹痛、下痢、便秘に関係します。

とくにIBSやSIBO傾向がある人では、小麦そのものというより、発酵性糖質への反応として症状が出ていることがあります。

また、小麦製品は単独で食べられることが少ない食品です。

パンには砂糖、油脂、乳製品が含まれることがあります。
菓子パンには砂糖、油、添加物が多く含まれます。
ラーメンには脂質、塩分、添加物、早食い、食べ過ぎが重なります。
パスタでは、にんにく、玉ねぎ、乳製品、脂質が一緒に入ることがあります。

このように、小麦製品で不調が出たとしても、原因がグルテンとは限りません。

食べ合わせ、量、食べる時間、胃腸の状態、便秘、腸内発酵、血糖、自律神経の緊張まで見ないと、判断を間違えます。

「小麦で悪化するからグルテンフリー」という説明は、わかりやすいですが、体の見方としては粗すぎることがあります。


除去食で栄養不足になることもあります

もうひとつ大切なのは、除去食による栄養不足です。

グルテンフリーを始めると、パン、麺、パスタ、うどん、菓子類、シリアル、加工食品などを避けることになります。

その結果、食事全体が整う人もいます。自然な食材が増え、野菜やたんぱく質が増え、加工食品が減るなら、体調がよくなることもあります。

しかし、反対に、食べられるものが減りすぎて栄養が不足する人もいます。

特に注意したいのは、

・総エネルギー不足
・たんぱく質不足
・鉄不足
・亜鉛不足
・マグネシウム不足
・ビタミンB群不足
・葉酸不足
・食物繊維不足
・カルシウム不足
・発酵性食品や穀物を避けすぎることによる腸内環境の偏り

などです。

市販のグルテンフリー食品の中には、食物繊維や微量栄養素が少なかったり、脂質や糖質に偏っていたりするものもあります。

「グルテンフリー」と書いてあるから健康的、とは限りません。

女性の場合、月経による鉄の消耗、低栄養、ダイエット歴、ストレス、睡眠不足、更年期の変化などが重なりやすく、安易な制限食で体力が落ちることがあります。

腸を整えるつもりで始めた食事制限によって、冷え、疲労感、めまい、動悸、眠りの浅さ、イライラ、集中力の低下が強くなることもあります。

だからこそ、除去食は「抜けばよい」ではなく、「抜いても栄養が保てるか」まで見なければいけません。


食事への不安が強くなる人もいます

除去食で見落とされやすいのが、食事への不安です。

最初は「小麦を抜くだけ」だったはずが、次第に食べられないものが増えていくことがあります。

小麦もだめ。
乳製品もだめ。
砂糖もだめ。
卵もだめ。
大豆もだめ。
発酵食品もだめ。
外食もだめ。
加工食品もだめ。

こうなると、食事が安心ではなく、緊張の時間になってしまいます。

「これを食べたら悪化するのでは」
「また腸に穴が開くのでは」
「毒素が漏れるのでは」
「ちゃんと守れなかった自分が悪いのでは」

そう感じるようになると、食事そのものがストレスになります。

慢性不調の方は、もともと自律神経が緊張しやすく、胃腸が敏感になっていることがあります。その状態で、食事への恐怖が強くなると、かえって胃腸の動きや消化に影響することもあります。

体をよくするための食事指導が、本人を追い詰めてしまう。

これは避けなければいけません。

本来、食事療法は、患者さんを不安にさせるためのものではありません。

体の状態を理解し、必要な範囲で調整し、少しずつ安心して食べられるものを増やしていくためのものです。


除去食をするなら、期間と再導入まで考えるべきです

もし除去食を行うなら、大切なのは「抜くこと」だけではありません。

どのくらいの期間行うのか。
何を評価するのか。
どの症状が変われば意味があるのか。
変化がなければどうするのか。
再導入はどうするのか。
栄養不足をどう防ぐのか。

ここまで決めて行う必要があります。

「しばらく小麦を抜いてください」
「ずっとグルテンフリーの方がいいです」
「リーキーガットが治るまでやめましょう」

このように、期間も再導入も評価基準もない指導は危険です。

本来、除去食は仮説を確認するための方法です。

たとえば、「小麦が関係しているかもしれない」という仮説を立てるなら、一定期間、症状を記録しながら除去し、その後、再導入して反応を見る必要があります。

ただ抜くだけでは、「本当に原因だったのか」がわかりません。

さらに、再導入をしないまま長期制限を続けると、本当は食べられるものまで避け続けることになります。

食事制限の目的は、食べられないものを増やすことではありません。

本当に合わないものを見つけ、必要のない制限を減らし、安心して食べられる範囲を広げることです。


グルテンフリーをすすめられたら確認してほしいこと

もし誰かに、「リーキーガットだからグルテンフリーにしましょう」と言われたら、次のことを確認してみてください。

・なぜグルテンフリーが必要だと判断したのですか
・セリアック病や小麦アレルギーの可能性は考えましたか
・検査が必要な状態ではありませんか
・グルテン以外に、フルクタンやFODMAPの可能性はありませんか
・IBSやSIBO、便秘、腸内発酵の問題は見ていますか
・除去する期間はどれくらいですか
・再導入はどう進めますか
・栄養不足をどう防ぎますか
・食事への不安が強くなっていないか見ていますか
・体重減少、慢性下痢、血便、発熱、強い腹痛など医科につなぐサインは確認していますか

これらに答えられないまま、「とりあえず抜きましょう」と言う場合、その指導はかなり不十分です。

専門家らしい言葉を使うことと、専門的に安全を見ていることは違います。

本当に必要なのは、グルテンフリーという方法ではありません。

その人に、今それが必要なのかを見立てる力です。


もみの木治療院で大切にしていること

神戸市北区のもみの木治療院では、慢性的な胃腸不調や食事で体調が揺れやすい方に対して、「リーキーガットだから」「小麦が悪いから」と一言で決めつけることはしません。

鍼灸院として体の緊張や自律神経の状態を見ながら、機能性医学の視点も取り入れ、胃酸、胆汁、膵臓、小腸、大腸、腸内細菌、血糖、栄養状態、睡眠、ストレスなどをできるだけ丁寧に整理していきます。

神戸市北区、三田市周辺で、「グルテンフリーをしているのに体調が安定しない」「腸活をしてもお腹の張りが続く」「食事制限が増えて、何を食べればいいかわからない」という方は、一度、体の状態を順番に見直してみることが大切です。

除去食は、悪いものではありません。

しかし、使い方を間違えると、体を整えるどころか、栄養不足や不安を深めることがあります。

大切なのは、何を抜くかだけではありません。

なぜ抜くのか。
どれくらい抜くのか。
いつ戻すのか。
何を補うのか。
何を見逃してはいけないのか。

そこまで考えて、初めて食事指導は安全になります。

流行語ではなく、構造で見る。

それが、慢性不調と向き合うために大切な土台だと考えています。


参考文献

A Clinician's Guide to Gluten Challenge

ACG Guideline: Diagnosis and Management of Celiac Disease

Gluten free diet and nutrient deficiencies: A review

The Gluten-Free Diet for Celiac Disease

Gluten-Free Diet: Gaps and Needs for a Healthier Diet


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