【その栄養学、もう古い!】第3回 マグネシウム不足と言われたあなたへ なぜ不足したのかを見ていますか?

第3回 マグネシウム不足と言われたあなたへ なぜ不足したのかを見ていますか?
「足がつりやすいですね。マグネシウム不足かもしれません」
「頭痛があるなら、マグネシウムを飲んでみましょう」
「眠りが浅いのは、マグネシウムが足りないからかもしれません」
栄養療法やサプリメントの情報では、マグネシウムという栄養素がよく登場します。
たしかに、マグネシウムは体にとってとても大切なミネラルです。筋肉や神経の働き、エネルギーを作る仕組み、血糖や血圧の調整、骨の健康など、さまざまな働きに関わっています。
ですから、マグネシウムが不足している人に、必要に応じて補うこと自体は間違いではありません。
ただし、ここで大切なことがあります。
それは、
「マグネシウムが足りないかどうか」
だけを見るのではなく、
「なぜ、マグネシウムが不足しやすい体になっているのか」
を見ることです。
足がつるからマグネシウム。
頭痛があるからマグネシウム。
眠れないからマグネシウム。
便秘だからマグネシウム。
このように、症状からすぐにサプリへつなげてしまうと、体の背景を見落としてしまうことがあります。
神戸市北区・三田市周辺で慢性的な不調のご相談を受けていても、「マグネシウムを飲んでいます」「寝る前にマグネシウムを入れています」「足がつるのでサプリを始めました」という方は少なくありません。
けれども、本当に必要なのは、ただマグネシウムを足すことではありません。
なぜ不足したのか。
なぜ吸収できないのか。
なぜ消耗しているのか。
なぜ体が緊張し続けているのか。
そこを見ていくことが、機能性医学的な栄養カウンセリングではとても大切です。
マグネシウムは大切。でも「万能サプリ」ではありません
マグネシウムは、私たちの体にとって欠かせないミネラルです。
筋肉が縮んだりゆるんだりするとき、神経が信号を伝えるとき、エネルギーを作るとき、血糖を調整するとき、骨を維持するときなど、多くの場面で関わっています。
そのため、マグネシウムが不足すると、筋肉のこわばり、足のつり、疲れやすさ、神経の過敏さ、睡眠の乱れ、便通の乱れなどと関連して考えられることがあります。
ただし、ここで注意が必要です。
マグネシウムが大切だからといって、すべての不調がマグネシウム不足で説明できるわけではありません。
足がつる人が、全員マグネシウム不足とは限りません。
頭痛がある人が、全員マグネシウム不足とは限りません。
眠れない人が、全員マグネシウム不足とは限りません。
同じ症状でも、背景は人によって違います。
たとえば、足がつる場合でも、水分不足、筋肉疲労、冷え、血流、神経の過敏性、薬剤の影響、糖代謝の乱れ、睡眠不足など、さまざまな要因が関係することがあります。
頭痛でも、首の緊張、噛みしめ、眼精疲労、血糖の乱れ、月経周期、更年期、自律神経、睡眠不足、ストレスなどが関係することがあります。
眠れない場合も、マグネシウム不足だけでなく、夜の光刺激、血糖の乱れ、カフェイン、精神的緊張、生活リズム、胃腸の不快感、更年期の変化などが関係していることがあります。
つまり、マグネシウムは大切です。
でも、マグネシウムだけで体を見てしまうと、人の体を単純化しすぎてしまうのです。
不足しているなら、なぜ不足したのか
もし本当にマグネシウムが不足していると考えられる場合でも、すぐに「では、サプリを飲みましょう」で終わってしまうのは少し早いです。
本来、見るべきなのは「不足の理由」です。
マグネシウム不足には、いくつかの背景が考えられます。
・食事からの摂取量が少ない
・野菜、豆類、海藻、ナッツ類、全粒穀物などが少ない
・加工食品や精製された食品が多い
・胃腸の働きが落ちて、吸収しにくい
・下痢や軟便が続いて、失いやすい
・強いストレスや睡眠不足で、消耗が増えている
・血糖の乱れや糖代謝の問題がある
・慢性炎症で体に負担がかかっている
・利尿薬や胃酸を抑える薬などの影響がある
・アルコールの習慣がある
・腎臓からの排泄が増えている可能性がある
このように、マグネシウム不足といっても、原因は一つではありません。
食事が少ない人と、胃腸で吸収できない人。
ストレスで消耗している人と、薬剤の影響がある人。
下痢で失っている人と、血糖の乱れが背景にある人。
同じ「マグネシウム不足」という言葉でも、必要な対応はまったく違います。
だからこそ、栄養カウンセリングでは「何を足すか」より先に、「なぜ足りなくなったのか」を見る必要があります。
胃腸が弱い人は、入れても吸収できないことがある
マグネシウムに限らず、栄養は口から入れれば終わりではありません。
食べる。
噛む。
胃で消化する。
小腸で吸収する。
肝臓で処理する。
血液に乗って運ばれる。
細胞で使われる。
不要なものを排泄する。
この流れがあって、はじめて栄養は体の中で働きます。
たとえば、胃腸の働きが弱い方では、食事やサプリを入れても、思ったように吸収できないことがあります。
胃もたれしやすい。
食後にお腹が張る。
下痢や軟便が多い。
便秘と下痢をくり返す。
少し食べただけで苦しくなる。
サプリを飲むと気持ち悪くなる。
プロテインやミネラルでお腹が張る。
このような方に、ただサプリを増やしても、かえって胃腸の負担になることがあります。
特に、マグネシウムの種類や量によっては、お腹がゆるくなることがあります。便秘対策として使われることもありますが、下痢や軟便がある人では、失うものをさらに増やしてしまう可能性もあります。
だからこそ、胃腸が弱い方では、まず「入れる」より前に「受け取れる体かどうか」を見ることが大切です。
サプリが悪いのではありません。
ただ、胃腸が受け取れない状態でサプリだけを増やすと、体を立て直すどころか、負担になることがあるのです。
ストレスと睡眠不足で、体はミネラルを消耗しやすくなる
現代の女性に多いのが、慢性的な緊張状態です。
仕事。
家事。
人間関係。
家族のこと。
将来への不安。
更年期の変化。
スマートフォンやパソコンによる刺激。
夜遅くまで頭が休まらない生活。
このような状態が続くと、体は常に緊張モードになりやすくなります。
筋肉がゆるまない。
首や肩がこる。
呼吸が浅い。
眠りが浅い。
朝から疲れている。
小さな音や光に敏感になる。
胃腸が動きにくい。
甘いものやカフェインが欲しくなる。
こうした状態では、マグネシウムだけでなく、体全体のミネラルバランスやエネルギー代謝に負担がかかりやすくなります。
ここで大切なのは、「ストレスがあるからマグネシウムを飲みましょう」ではありません。
本当に見るべきなのは、なぜ体が緊張し続けているのかです。
睡眠時間は足りているか。
夜にスマートフォンを見すぎていないか。
血糖が乱れて、夜中に目が覚めていないか。
カフェインが多すぎないか。
呼吸が浅くなっていないか。
首や顎の緊張が続いていないか。
胃腸が常に不快で、自律神経が休まらない状態になっていないか。
マグネシウムは、こうした体を支える一つの助けになることがあります。
しかし、根本にある生活リズムや自律神経の乱れを見ないままでは、サプリだけで大きく変えることは難しい場合があります。
薬剤の影響も見落としてはいけません
マグネシウム不足を考えるとき、見落とされやすいのが薬剤の影響です。
たとえば、利尿薬の一部は尿からのマグネシウム排泄に影響することがあります。また、胃酸を抑える薬を長期間使用している場合、マグネシウム状態に影響する可能性があることも報告されています。
もちろん、薬が悪いという話ではありません。
薬は必要があって処方されているものです。自己判断で中止するのは危険です。高血圧、心臓病、胃食道逆流症、骨粗鬆症、糖尿病、腎臓病などで治療中の方は、必ず医師の指示を優先してください。
ただし、栄養状態を考えるときには、薬剤の影響も背景の一つとして確認する必要があります。
「マグネシウムが低いからサプリを足す」
だけではなく、
「なぜ低くなりやすいのか」
「薬剤の影響はないか」
「胃腸や腎臓の状態はどうか」
「医師に相談すべき点はないか」
を見ていくことが大切です。
また、マグネシウムのサプリメントは、一部の抗生物質や骨粗鬆症の薬などの吸収に影響することがあります。薬を服用中の方は、自己判断で飲み合わせを決めず、医師や薬剤師に確認することが大切です。
血液検査で正常でも、体の状態がすべて分かるわけではない
マグネシウムは、血液検査で確認されることがあります。
しかし、血液中のマグネシウムだけで体全体のマグネシウム状態を完全に判断することは簡単ではありません。マグネシウムの多くは骨や細胞の中に存在しており、血液中にある量は一部です。
そのため、検査値は参考になりますが、数値だけで決めつけるのは避けたいところです。
検査値。
症状。
食事内容。
胃腸の状態。
便通。
睡眠。
ストレス。
薬剤。
運動量。
月経や更年期の変化。
アルコールやカフェイン。
過去の体調の流れ。
こうした情報を組み合わせて見ることで、初めて「その人の体の背景」が見えてきます。
これはマグネシウムに限りません。
鉄でも、ビタミンB群でも、タンパク質でも、亜鉛でも同じです。
数字だけでサプリを決めるのではなく、数字の背景を見る。
症状だけでサプリを決めるのではなく、症状が出ている流れを見る。
ここが、現代の慢性不調を見るうえで大切な視点です。
サプリを使うなら、目的と出口を決める
では、マグネシウムのサプリは使わない方がいいのでしょうか。
そういう意味ではありません。
必要な方には、マグネシウムを補うことが助けになることがあります。食事だけでは不足しやすい方、胃腸や生活習慣の改善と並行して一時的に補助が必要な方、医師や専門職の判断で必要とされる方もおられます。
ただし、使うなら目的をはっきりさせることが大切です。
・何のために使うのか
・どのくらいの量を使うのか
・どのくらいの期間使うのか
・食事では何を整えるのか
・胃腸の状態はどうか
・下痢や腹部不快感は出ていないか
・薬との飲み合わせは問題ないか
・腎臓の機能に不安はないか
・やめる、減らすタイミングをどう考えるか
サプリは、飲み続けることが目的ではありません。
本来の目的は、体が栄養を受け取り、使い、回復していける状態に近づけることです。
そのためには、サプリを足すだけでなく、食事、睡眠、胃腸、血糖、自律神経、ストレス、運動、薬剤の影響まで見ていく必要があります。
神戸市北区・三田市で、慢性不調を根本から見直したい方へ
もみの木治療院では、鍼灸や手技による体の調整に加え、機能性医学の考え方を取り入れながら、慢性的な不調の背景を整理することを大切にしています。
「何を飲めばいいですか?」
という質問は、とても自然なものです。
でも、その前に、
「なぜ今、その栄養素が必要だと感じる体になっているのか」
「なぜ疲れが抜けないのか」
「なぜ眠れないのか」
「なぜ胃腸が受け取れないのか」
「なぜ緊張が抜けないのか」
を一緒に見ていくことが大切だと考えています。
特に、慢性的な疲れ、頭痛、めまい、首こり、胃腸の不調、便秘、下痢、睡眠の乱れ、自律神経の乱れ、更年期の不調などでは、一つの栄養素だけで説明できないことが多くあります。
マグネシウム不足を見るなら、マグネシウムだけを見ない。
その人の体全体を見る。
これが、当院が大切にしている栄養カウンセリングの基本です。
まとめ
マグネシウムは、体にとって大切なミネラルです。
筋肉、神経、エネルギー代謝、血糖、血圧、骨の健康など、多くの働きに関わっています。
しかし、
足がつるからマグネシウム。
頭痛だからマグネシウム。
眠れないからマグネシウム。
便秘だからマグネシウム。
というように、症状からすぐにサプリを決めるのは慎重に考える必要があります。
大切なのは、
なぜ不足したのか。
なぜ吸収できないのか。
なぜ消耗しているのか。
なぜ体が緊張し続けているのか。
薬剤や胃腸、血糖、睡眠、自律神経の影響はないか。
こうした背景を見ることです。
サプリを否定しているのではありません。
ただ、サプリを飲む前に、体を見ること。
マグネシウムを足す前に、マグネシウムが不足しやすい体の背景を見ること。
それが、現代の慢性不調に必要な栄養カウンセリングだと考えています。
次回は、「鉄を飲んでも元気にならない人へ 貧血の裏にある“吸収できない体”」というテーマで、鉄不足やフェリチン低値について、ただ鉄を足すだけでは見落としやすい背景をお伝えします。
参考文献
Magnesium - The Nutrition Source, Harvard T.H. Chan School of Public Health
Mechanisms of proton pump inhibitor-induced hypomagnesemia
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