【なんでも腸が悪い屋さんに注意!】第8回 腸のバリアを壊す6つのルート。炎症・腸内細菌・免疫・代謝・薬剤・ストレス

08 腸のバリアを壊す6つのルート。炎症・菌叢・免疫・代謝・薬剤・ストレス

第8回 腸のバリアを壊す6つのルート。炎症・腸内細菌・免疫・代謝・薬剤・ストレス

「リーキーガットですね」
「腸に穴が開いています」
「だからグルテンフリーです」
「だから腸修復サプリです」

このような説明を聞くと、なんとなく原因がわかったような気持ちになるかもしれません。

しかし、本当に大切なのは、「リーキーガット」という言葉を使うことではありません。

なぜ、その人の腸のバリアが乱れている可能性があるのか。
どのルートから腸に負担がかかっているのか。
何を先に整えるべきなのか。
何をしてはいけないのか。

ここを見ないと、腸の不調はいつまでも「腸活」「除去食」「サプリ」の中をぐるぐる回ることになります。

腸のバリアは、ただの壁ではありません。

食べ物を消化し、栄養を吸収しながら、細菌や不要な成分が体内に入りすぎないように調整する、非常に精密な仕組みです。そこには、腸の粘膜、粘液層、腸内細菌、免疫、血流、自律神経、消化液、胆汁、腸の動きなどが関係しています。

つまり、腸のバリアが乱れる理由は一つではありません。

今回は、腸のバリアを乱しやすい代表的な6つのルートを整理します。

・炎症ルート
・腸内細菌ルート
・免疫ルート
・代謝ルート
・薬剤ルート
・ストレスルート

この6つを見ずに、「リーキーガットだから」と言ってしまうのは、かなり浅い見立てです。


1つ目は、炎症ルートです

腸のバリアを乱す大きな要因のひとつが、炎症です。

炎症というと、赤く腫れる、熱を持つ、痛むというイメージがあるかもしれません。しかし、腸ではもっと静かに、低いレベルの炎症が続いていることもあります。

たとえば、感染後の腸の不調、炎症性腸疾患、食物に対する過敏な反応、腸内細菌の乱れ、薬剤の影響、アルコール、過度な加工食品、強いストレスなどが重なると、腸の粘膜に負担がかかることがあります。

炎症が続くと、腸の上皮細胞や粘液層、細胞同士をつなぐ仕組みに影響が出る可能性があります。その結果、腸のバリア機能が乱れやすくなります。

ここで大切なのは、「炎症があるからサプリで抑えましょう」と単純に考えないことです。

なぜ炎症が続いているのかを見なければいけません。

・感染後の変化なのか
・便秘や腸内発酵が強いのか
・炎症性腸疾患の確認が必要なのか
・食事内容が合っていないのか
・薬剤やアルコールの影響なのか
・睡眠不足やストレスが背景にあるのか

この背景を見ずに、「腸が漏れているから修復しましょう」と言うのは、原因を見ずに結果だけを追いかけている状態です。

腸を整えるには、炎症そのものよりも、炎症が続く理由を見つけることが大切です。


2つ目は、腸内細菌ルートです

腸内細菌は、腸のバリアと深く関わっています。

腸内細菌は、食物繊維を発酵して短鎖脂肪酸を作ったり、粘液層や免疫の働きに関わったり、腸の環境を保つうえで大切な役割を持っています。

しかし、腸内細菌のバランスが乱れると、腸のバリアに負担がかかることがあります。

ここで注意したいのは、「腸内細菌が乱れているなら、善玉菌を増やせばよい」と短絡しないことです。

腸内細菌が乱れる背景には、さまざまな理由があります。

・胃酸分泌の低下
・胆汁の流れの問題
・膵臓の消化酵素の不足
・便秘
・下痢の慢性化
・抗生物質の使用歴
・食物繊維の不足
・糖質や脂質の偏り
・ストレス
・睡眠不足
・小腸内細菌増殖
・食事時間の乱れ

このような背景を見ずに、「乳酸菌を増やしましょう」「発酵食品を摂りましょう」と言うと、かえって悪化する人もいます。

特に、小腸内で細菌が増えすぎている傾向がある人では、発酵食品、オリゴ糖、食物繊維、豆類、玉ねぎ、にんにく、小麦などで、お腹の張りやガスが強くなることがあります。

腸内細菌は大切です。

でも、腸内細菌だけを見ても不十分です。

本当に大切なのは、「なぜ腸内細菌が乱れる環境になっているのか」を見ることです。

腸内細菌を整える前に、腸内細菌が乱れる土台を見直す。

ここを飛ばすと、腸活はうまくいきません。


3つ目は、免疫ルートです

腸は、免疫と非常に深く関わっています。

食べ物、腸内細菌、細菌の成分、さまざまな外から入ってくる物質に対して、腸の免疫は常に反応しています。

ただし、健康な腸では、何でも攻撃するわけではありません。

必要なものには過剰に反応せず、危険なものには反応する。そのバランスが大切です。

この免疫のバランスが乱れると、腸のバリアにも影響が出ることがあります。

たとえば、セリアック病のように、グルテンに対する免疫反応が小腸の粘膜に障害を起こす疾患があります。炎症性腸疾患では、免疫、腸内細菌、腸のバリア、遺伝的背景などが複雑に関係します。食物アレルギーや一部の食物過敏でも、免疫の関与を考える必要があります。

ここで問題になるのは、免疫の話を「リーキーガットで毒素が漏れているから自己免疫になる」と単純化してしまう説明です。

これは非常に雑です。

自己免疫疾患や慢性炎症は、腸だけで説明できるものではありません。

遺伝的な背景、感染、環境要因、ホルモン、睡眠、ストレス、栄養状態、血糖、薬剤、全身の炎症など、さまざまな要因が関係します。

腸のバリアはその一部として重要かもしれません。

しかし、「腸に穴が開いたから免疫が暴走している」と一言で片づけると、かえって本当に見るべきものを見逃します。

免疫ルートを見るときは、腸だけでなく全身を見ることが大切です。


4つ目は、代謝ルートです

腸のバリアは、代謝の状態とも関係します。

代謝というと、ダイエットや体重の話を思い浮かべるかもしれません。しかし、ここでいう代謝とは、血糖、脂質、肝臓、内臓脂肪、筋肉量、炎症、ミトコンドリア、エネルギー産生などを含む、体全体のエネルギーの使い方のことです。

たとえば、血糖が乱れやすい人、内臓脂肪が多い人、脂肪肝がある人、慢性的に炎症が続きやすい人では、腸内細菌や腸管バリアとの関係が研究されています。

高脂肪食や過剰な糖質、超加工食品、食物繊維不足、運動不足、睡眠不足などが重なると、腸内細菌や腸管バリア、肝臓、炎症の間に悪循環が起こる可能性があります。

ここで大切なのは、「腸だけを整えれば代謝がよくなる」と考えないことです。

逆に、代謝の乱れが腸に負担をかけていることもあります。

たとえば、

・血糖の乱れで食欲や間食が増える
・睡眠不足で血糖と食欲が乱れる
・内臓脂肪が炎症を強める
・脂肪肝で肝臓の処理能力が落ちる
・運動不足で腸の動きが低下する
・筋肉量が少なく血糖が安定しにくい
・食物繊維不足で腸内細菌が偏る

このように、腸と代謝はつながっています。

だから、「リーキーガットだから腸サプリ」だけでは足りないことがあります。

血糖、睡眠、筋肉、肝臓、内臓脂肪、食事の質まで見る必要があります。

腸だけを見ているようで、実は全身を見なければ腸は整わないのです。


5つ目は、薬剤ルートです

腸のバリアを考えるとき、見落としてはいけないのが薬剤の影響です。

特に、鎮痛薬、抗炎症薬、抗生物質、胃酸を抑える薬などは、胃腸の状態に影響することがあります。

もちろん、薬が悪いと言いたいわけではありません。

薬は必要な場面があります。痛みを抑える、炎症を抑える、感染に対応する、胃酸を抑えるなど、医療上とても大切な役割があります。

ただし、長期的に使っている場合や、胃腸症状がある場合には、薬剤の影響を見落としてはいけません。

たとえば、非ステロイド性抗炎症薬と呼ばれる痛み止めの一部は、小腸の粘膜や腸管透過性に影響することが研究されています。抗生物質は腸内細菌のバランスに影響します。胃酸を抑える薬は、必要な人には重要ですが、胃酸が持つ消化や防御の働きにも関わります。

ここで問題なのは、薬剤の影響を見ずに「リーキーガットだからサプリ」と言ってしまうことです。

たとえば、長く痛み止めを使っている人に、腸修復サプリだけをすすめても、腸に負担をかけている要因を見逃すかもしれません。

抗生物質を何度も使ってきた人に、単純に「善玉菌を増やしましょう」と言うだけでは不十分かもしれません。

胃酸を抑える薬を長く使っている人では、消化、栄養吸収、腸内細菌、小腸内発酵の視点が必要になることがあります。

薬を勝手にやめることは絶対にすすめません。

しかし、胃腸の不調を見立てるなら、薬剤歴を確認しないのは危険です。

「どんな薬を、どれくらい、何のために使っているのか」

ここを確認せずに腸を語るのは、専門的とは言えません。


6つ目は、ストレスルートです

腸とストレスは、非常に深く関係しています。

緊張するとお腹が痛くなる。
不安が強いと下痢をする。
忙しい時期に便秘になる。
ストレスが続くと胃が重い。
寝不足が続くとお腹が張る。

このような経験がある方は多いと思います。

腸は、自律神経の影響を強く受けます。

ストレスが続くと、交感神経が優位になりやすく、胃腸の動き、消化液の分泌、血流、腸の知覚、腸内細菌、免疫に影響することがあります。

また、ストレスは腸内細菌や腸のバリア、炎症との関係も研究されています。

ここで注意したいのは、「ストレスですね」で終わらせないことです。

ストレスは便利な言葉です。

でも、「ストレスのせいです」と言うだけでは、患者さんは救われません。

大切なのは、そのストレスが体のどこに出ているのかを見ることです。

・噛みしめが強いのか
・呼吸が浅いのか
・睡眠が乱れているのか
・胃酸分泌が落ちているのか
・腸の動きが乱れているのか
・便秘や下痢に出ているのか
・血糖が乱れて間食が増えているのか
・筋肉の緊張が抜けないのか
・生理周期や更年期症状と重なっているのか

このように、ストレスを具体的に体の反応として見ていくことが大切です。

腸の不調にストレスが関わる場合、サプリだけでは足りません。

睡眠、呼吸、食事時間、血糖、運動、安心感、自律神経の調整まで含めて見る必要があります。


6つのルートは、別々ではなく重なります

ここまで、炎症、腸内細菌、免疫、代謝、薬剤、ストレスという6つのルートを説明しました。

ただし、実際の体では、これらは別々に起きているわけではありません。

たとえば、慢性的なストレスがある人は、睡眠が乱れ、血糖が乱れ、間食が増え、腸内細菌が乱れ、便秘や下痢が起こりやすくなることがあります。

便秘が続くと、腸内発酵が強くなり、お腹の張りが増え、炎症や過敏性が強くなることがあります。

痛み止めを長く使っている人では、薬剤の影響、炎症、胃腸粘膜、腸内細菌が重なっていることがあります。

脂肪肝や内臓脂肪がある人では、代謝の乱れ、慢性炎症、腸内細菌、腸管バリア、肝臓の処理能力がつながっていることがあります。

つまり、「あなたはリーキーガットです」と一言で終わるほど、体は単純ではありません。

本当に必要なのは、どのルートが主に関係しているのかを見立てることです。

それによって、最初に整えるべきことが変わります。


サプリの前に、ルートを見分けることが大切です

腸のバリアを整えると言うと、すぐにサプリメントの話になりがちです。

グルタミン。
亜鉛。
ビタミンD。
乳酸菌。
酪酸菌。
食物繊維。
コラーゲン。
ボーンブロス。

こうしたものが紹介されることがあります。

もちろん、状況によって役立つ可能性があるものもあります。

しかし、問題は「何を飲むか」ではありません。

その前に、「なぜ腸が乱れているのか」を見なければいけません。

炎症ルートが強い人と、腸内細菌ルートが強い人では、対応が変わります。
小腸内発酵が強い人と、食物繊維不足の人では、対応が逆になることもあります。
ストレスルートが強い人にサプリだけを増やしても、睡眠や自律神経が変わらなければ改善しにくいことがあります。
薬剤ルートが関係している人では、主治医と相談しながら薬剤の背景を確認する必要があります。
代謝ルートが強い人では、血糖、筋肉、内臓脂肪、肝臓、睡眠まで見なければいけません。

だから、最初に必要なのは、サプリではなく見立てです。

腸を修復する前に、腸を乱しているルートを見つける。

ここを飛ばすと、腸活はいつまでも迷子になります。


一般の方に知ってほしいこと

もしあなたが、「リーキーガットです」と言われて不安になっているなら、まず怖がる前に確認してほしいことがあります。

その人は、腸のバリアが乱れる理由を説明してくれたでしょうか。

炎症を見ていますか。
腸内細菌を見ていますか。
免疫を見ていますか。
代謝を見ていますか。
薬剤歴を確認していますか。
ストレスや自律神経を見ていますか。

それとも、「腸に穴が開いている」「毒素が漏れている」「だからグルテンフリー」「だからサプリ」と、決まった流れに当てはめているだけでしょうか。

リーキーガットという言葉を知っている人は増えました。

でも、その言葉を知っていることと、腸を見立てられることは違います。

大切なのは、流行語ではありません。

あなたの体で、どのルートが強く働いているのかを順番に見ていくことです。


もみの木治療院で大切にしていること

神戸市北区のもみの木治療院では、慢性的な胃腸不調や腸活で迷っている方に対して、「リーキーガットだから」と一言で決めつけることはしません。

鍼灸院として体の緊張や自律神経の状態を見ながら、機能性医学の視点も取り入れ、炎症、腸内細菌、免疫、代謝、薬剤歴、ストレス、睡眠、血糖、栄養状態などをできるだけ丁寧に整理していきます。

米国 Kharrazian Institute でAFMC(Advanced Functional Medicine Clinician)の上級認定を受けた院長が、流行語や検査の数字だけに頼らず、慢性不調の背景を順番に見立てることを大切にしています。

神戸市北区、三田市周辺で、「腸活をしても変わらない」「発酵食品や乳酸菌で悪化する」「検査やサプリが増えるばかりで体調が安定しない」という方は、一度、体の状態を整理してみることが大切です。

腸のバリアを壊すルートは、一つではありません。

炎症なのか。
腸内細菌なのか。
免疫なのか。
代謝なのか。
薬剤なのか。
ストレスなのか。

そこを丁寧に分けて考えることが、慢性不調と向き合うための土台だと考えています。


参考文献

Intestinal permeability disturbances: causes, diseases and attempts to regulate

Gut microbiota, intestinal permeability, and systemic inflammation

Intestinal barrier permeability: the influence of gut microbiota, nutrition, and exercise

Intestinal permeability in the pathogenesis of NSAID-induced enteropathy

Stressed to the Core: Inflammation and Intestinal Permeability Link Stress-Related Gut Microbiota Shifts to Mental Health Outcomes


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