【産後に貧血、鉄不足】第2回 それ、隠れ貧血かもしれません

02 それ、隠れ貧血かもしれません

第2回 それ、隠れ貧血かもしれません

産後の疲れがなかなか抜けない。少し動いただけで息が上がる。立ち上がるとふわっとする。眠っても回復した感じがしない。気持ちにも余裕がなくなって、理由もなく涙が出たり、ちょっとしたことでイライラしてしまう。

そんな時、病院で血液検査を受けて「貧血ではありません」と言われることがあります。異常がないと言われると、安心する一方で、「では、このしんどさは何なのだろう」と、余計に自分を責めてしまう方もいます。

でも、ここで知っておいてほしいことがあります。一般的な血液検査で「貧血ではない」と言われても、体の中の鉄に余裕があるとは限らない、ということです。

これは、産後の女性にとってとても大切な視点です。


貧血ではないのに、鉄が足りないことがあります

貧血というと、多くの場合はヘモグロビンという数値を見ます。ヘモグロビンは、血液の中で酸素を運ぶ役割を持っています。この数値が低くなると、一般的に「貧血」と判断されます。

ただ、鉄不足はヘモグロビンが下がる前から始まっていることがあります。

たとえるなら、ヘモグロビンは毎日使っている財布の中のお金、フェリチンは貯金のようなものです。財布の中にはまだ少しお金があるので、外から見ると何とか生活できているように見える。でも、貯金はかなり減っていて、予定外の出費があると一気に苦しくなる。そんな状態に近いかもしれません。

産後の体では、この「鉄の貯金」が減りやすくなります。妊娠中は赤ちゃんの成長のために鉄が必要になります。出産では出血があります。その後は授乳や夜間のお世話が始まり、自分の食事や睡眠は後回しになりがちです。

だから、ヘモグロビンが基準範囲内でも、体の中では鉄の余裕が少なくなっていることがあります。これが、いわゆる「隠れ貧血」と呼ばれる状態です。

医学的には「鉄欠乏はあるけれど、まだ明らかな貧血にはなっていない状態」と考えると分かりやすいです。


鉄は、血液だけでなくエネルギーにも関わります

鉄は、血液のためだけに必要な栄養ではありません。

体の細胞がエネルギーを作る時にも鉄は関わります。脳や神経が安定して働くためにも、鉄は大切な材料のひとつです。だから鉄が不足してくると、単に「顔色が悪い」「立ちくらみがする」というだけではなく、だるさ、息切れ、集中しにくさ、気分の落ち込み、イライラ、眠っても回復しない感じとして表れることがあります。

産後は、もともと疲れやすい時期です。そこに鉄不足が重なると、体はいつも省エネ状態になります。

赤ちゃんのお世話をするだけで精一杯。家事に手が回らない。人に連絡する気力も出ない。何かを考えようとしても、頭がぼんやりする。

それは、あなたが怠けているからではありません。体の中で、回復に必要な材料が足りなくなっている可能性があります。


検査では、何を見るとよいのでしょうか

産後の鉄不足を考える時、ヘモグロビンだけでは分からないことがあります。

大切なのは、赤血球の大きさや濃さ、鉄の貯金にあたるフェリチン、鉄がどれくらい運ばれているか、炎症がないかなどを、全体として見ることです。

ただし、フェリチンにも注意点があります。フェリチンは鉄の貯金を反映する大切な項目ですが、炎症があると高めに出ることがあります。産後すぐの体は、出産による炎症や回復過程の影響を受けています。そのため、産後早期のフェリチンだけを見て「鉄は足りています」と判断しにくいことがあります。

つまり、数値だけを一つ見て決めるのではなく、出産時の出血量、妊娠中の貧血の有無、月経再開の時期、授乳状況、食事内容、疲労感、めまい、動悸、睡眠の状態などを合わせて見ていくことが大切です。

機能性医学では、こうした「検査では大きな異常がないけれど、体としては余裕がない状態」を丁寧に見ていきます。病名がつくかどうかだけではなく、なぜ今の体が回復しにくいのかを一緒に整理していく視点です。


鉄を摂ればすぐよくなる、とは限りません

ここで大切なのは、「鉄不足かもしれないなら、鉄をたくさん飲めばいい」と単純に考えないことです。

鉄は必要な人には大切ですが、誰にでも同じように合うわけではありません。胃が重くなる、便秘になる、気持ち悪くなる方もいます。また、鉄を摂ってもなかなか上がらない場合、胃腸の働き、炎症、たんぱく質不足、ビタミンB群、亜鉛、甲状腺、自律神経の問題が関係していることもあります。

産後の方は、ただでさえ胃腸が弱っていたり、食事が不規則になったりしています。そこに合わない鉄サプリを入れると、かえってつらくなることもあります。

だからこそ、まずは「自分の体で何が起きているのか」を知ることが大切です。

食事では、いきなり完璧を目指さなくて大丈夫です。赤身の肉、魚、卵、あさり、しじみ、豆腐、納豆、味噌汁など、今の生活の中で少し足せそうなものからでかまいません。鉄だけでなく、たんぱく質を一緒に取ることも、産後の回復には大切です。

そして、強い疲労感、動悸、息切れ、めまい、気分の落ち込みが続く場合は、自己判断で抱え込まず、医療機関での検査や相談も考えてください。


「異常なし」でも、つらさは本物です

産後の女性は、つらさを我慢しがちです。

赤ちゃんのお世話があるから。家族に心配をかけたくないから。みんなも頑張っていると思うから。自分だけ弱音を吐いてはいけない気がするから。

でも、検査で大きな異常がないことと、体が楽であることは同じではありません。

特に産後は、鉄、睡眠、血糖、自律神経、甲状腺、ホルモン、授乳、炎症などが複雑に重なります。その中で鉄不足は、見逃されやすいけれど、整えることで回復の入口になりやすい大切な要素です。

神戸市北区のもみの木治療院では、鍼灸院として産後の体の緊張や自律神経の状態を見ながら、機能性医学の視点も取り入れて、疲れが抜けない理由を一緒に整理していきます。

当院では、女性施術者が産後ケアを担当しています。出産・育児の経験があるため、産後のしんどさや、家族にも言いにくい本音を話しやすい環境を大切にしています。また、産後の体については、鉄だけでなく、甲状腺、血糖、睡眠、栄養、自律神経など、知識を常にアップデートしながら見ています。

三田市や神戸市北区周辺で、産後の疲れ、めまい、動悸、イライラ、不安、眠っても回復しない感じが続いている方は、「気のせい」「母親だから仕方ない」と決めつける前に、一度体の中の状態を見直してみてください。

あなたのしんどさには、理由があるかもしれません。

そして理由が見えてくると、できることも少しずつ見えてきます。


参考文献

Current concepts in postpartum anemia management

Iron deficiency without anaemia: a diagnosis that matters

Effect of iron supplementation on fatigue in nonanemic menstruating women with low ferritin: a randomized controlled trial


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