【産後に貧血、鉄不足】第9回 鉄不足と眠れない体

09 鉄不足と眠れない体

第9回 鉄不足と眠れない体

産後、「眠りたいのに眠れない」というつらさを感じる方がいます。

赤ちゃんが寝てくれた。今なら少し休める。そう思って布団に入ったのに、なぜか目が冴えてしまう。体は疲れているのに、頭だけが動き続ける。次に赤ちゃんが起きることを考えると、眠る前から緊張してしまう。

夜中に授乳して、赤ちゃんを寝かせて、やっと自分も横になる。でも、胸がざわざわして眠れない。朝が近づくほど焦って、「また今日も眠れなかった」と苦しくなる。

産後の睡眠不足は、赤ちゃんのお世話があるので避けられない部分もあります。けれど、「寝る時間がない」のと、「眠れるはずの時間にも眠れない」のは少し違います。

もし、体は限界なのに眠れない状態が続いているなら、それはあなたの気持ちが弱いからではありません。産後の体の中で、鉄不足、血糖、自律神経、ホルモン、甲状腺、ストレスが重なり、体が休む方向に切り替わりにくくなっているのかもしれません。


産後の眠れなさは、ただの寝不足ではありません

産後は、睡眠が細切れになります。

夜中に何度も起きる。授乳する。ミルクを作る。おむつを替える。泣き声に反応する。赤ちゃんが静かでも、息をしているか気になって目が覚める。

こうした生活が続くと、脳は「いつでも起きられる状態」に近づいていきます。本当は眠りたいのに、体が警戒モードから抜けにくくなるのです。

そのため、赤ちゃんが眠っている時間にも、自分は眠れないことがあります。家族から「今のうちに寝たらいいのに」と言われても、眠れないものは眠れません。

この時、本人はとてもつらいです。

眠れないことで焦る。焦るほど眠れない。眠れないまま朝になる。朝になると、体は重く、気持ちも不安定になる。そしてまた夜が来るのが怖くなる。

これは、根性でどうにかする話ではありません。睡眠は、脳と自律神経と体の材料が整って、はじめて深く休める方向に入りやすくなります。


鉄不足があると、体は休みにくくなることがあります

鉄は、血液のためだけに必要なものではありません。

鉄は酸素を運ぶ働きに関わり、体のエネルギーづくりにも関わっています。脳や神経が安定して働くためにも、鉄は大切な材料のひとつです。

産後の体で鉄の余裕が少なくなると、日中の疲労感だけでなく、夜の休みにくさにつながることがあります。体が十分にエネルギーを作れないと、日中にぐったりしているのに、夜になると逆に神経が高ぶるように感じる方もいます。

また、鉄不足は、むずむず脚症候群との関連もよく知られています。夜、横になると脚がむずむずする。じっとしていられない。動かすと少し楽になる。寝ようとすると脚が気になって眠れない。こうした症状がある場合、鉄の状態を確認した方がよいことがあります。

もちろん、眠れない原因がすべて鉄不足というわけではありません。産後の不眠には、睡眠の断片化、不安、授乳、血糖の乱れ、甲状腺の変化、痛み、育児の緊張、周囲のサポート不足なども関係します。

ただ、鉄不足はその中で見落とされやすい要素です。

「眠れないのは考えすぎだから」と片づける前に、体が休むための材料が足りているかを見てあげることは大切です。


疲れているのに眠れない体

本当に疲れているなら眠れるはず。そう思われることがあります。

でも、実際にはそうとは限りません。

体が強く消耗している時、自律神経は休む方向ではなく、かえって緊張することがあります。血糖が不安定な時、夜中に目が覚めやすくなることもあります。授乳で睡眠が切られる生活が続くと、脳は深く眠るタイミングをつかみにくくなることがあります。

そこに鉄不足が重なると、体はさらに余裕を失いやすくなります。

朝から疲れている。昼間も眠い。けれど、赤ちゃんが寝た夜に限って眠れない。布団に入ると、頭の中で明日のこと、授乳のこと、家事のこと、上の子のことがぐるぐる回る。

この状態を、本人の努力不足として見るのは酷です。

産後の体は、休みたいのに休めない環境に置かれています。そのうえで、鉄やたんぱく質、血糖、自律神経のバランスが崩れると、眠りのスイッチが入りにくくなることがあります。

大切なのは、「どうして眠れないの」と自分を責めることではなく、「体が休める条件がそろっているだろうか」と見ていくことです。


まずは、夜だけでなく昼の体を整える

眠れないと、どうしても夜のことばかり考えてしまいます。

何時に寝ればいいのか。スマホを見ない方がいいのか。寝る前に何をすればいいのか。もちろん、夜の過ごし方も大切です。

でも、産後の眠りは、昼間の体の状態にも大きく影響されます。

日中、食事が抜けている。甘いものやパンだけで過ごしている。水分が足りていない。ずっと抱っこで体に力が入っている。外の光を浴びる時間がほとんどない。こうした状態が続くと、夜になっても体は落ち着きにくくなります。

まずできることは、とても小さくて大丈夫です。

朝、カーテンを開けて少し光を入れる。食べられる時に、卵、魚、肉、豆腐、納豆、味噌汁などを少し足す。授乳の合間に水分を取る。寝る前に何かを頑張るより、肩やお腹の力を少し抜いて、長く吐く呼吸を数回だけしてみる。

これだけで全部が変わるわけではありません。けれど、体に「休んでもいい」という合図を少しずつ戻すことはできます。

産後の回復は、一気に整えるものではありません。眠りも同じです。小さな合図を積み重ねながら、体が安心して休める状態を作っていくことが大切です。


眠れない時は、早めに相談していい

産後の不眠は、とてもつらいものです。

眠れない日が続くと、気持ちの余裕がなくなります。不安が強くなります。涙が出やすくなります。赤ちゃんの泣き声に過敏になります。自分が壊れてしまうのではないかと怖くなることもあります。

そのような時は、ひとりで抱え込まないでください。

特に、眠れない状態が何日も続く、気分の落ち込みが強い、強い不安や焦りがある、自分や赤ちゃんを傷つけてしまうのではないかと怖い、現実感がない、周囲から見て様子が大きく違う場合は、早めに医療機関や周産期メンタルヘルスの相談先につながることが大切です。

体の土台を見ることは大切です。鉄、血糖、甲状腺、自律神経、睡眠リズムを整えることは、回復を支える力になります。

でも、つらさが強い時は、栄養や生活だけで何とかしようとしなくて大丈夫です。必要なサポートを受けることも、立派な回復の一部です。


眠れない体にも、理由があります

産後の眠れなさは、あなたのせいではありません。

赤ちゃんを守るために、体も脳もずっと緊張してきました。出産で鉄を失い、授乳や夜間のお世話でエネルギーを使い、食事も睡眠も自分の思い通りにはなりません。

その中で眠れなくなるのは、甘えではありません。体が「このままではつらいです」と知らせているのかもしれません。

神戸市北区のもみの木治療院では、鍼灸院として体の緊張や自律神経の状態を見ながら、機能性医学の視点も取り入れて、産後の不調を一緒に整理しています。

女性施術者は出産・育児の経験があり、産後の眠れなさ、不安、疲れ、授乳中のしんどさ、家族には言いにくい本音も話しやすい環境を大切にしています。産後ケアは片手間ではなく、鉄、血糖、睡眠、甲状腺、自律神経、胃腸、炎症など、知識を常にアップデートしながら見ることが必要です。

三田市や神戸市北区周辺で、産後に眠れない、疲れているのに休めない、夜になると不安が強くなる、眠っても回復しない感じが続いている方は、ひとりで我慢しなくて大丈夫です。

眠れない体にも、理由があります。

理由が少し見えてくると、体を責めるのではなく、体が休める方向へ進むことができます。


参考文献

Current concepts in postpartum anemia management

Iron deficiency without anaemia: a diagnosis that matters

Sleep, Depression, and Fatigue in Late Postpartum

Associations between sleep and circadian rhythm disruption and perinatal anxiety

Management of Restless Legs Syndrome in Pregnancy and Lactation


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