







この腹直筋離開という言葉をご存じの方はあまり多くはありません。最近、ようやく日本語の文献が増えてきていますが、アメリカでは産後の問題として取り上げられています。英語ではRectus DiastatsisやDiastasis Rectiと言います。腹筋の腱が縦に裂けて「ぽっこりお腹」になってしまうことを言います。

「腹直筋」というのは、腹筋の一番外層にある筋肉です。6つに割れるカッコいい象徴の腹部の筋肉です。この筋肉のおかげで起き上がることができ、瞬発力のある運動が可能になるのです。
ずばり! たるんだ腹筋と裂けた腹筋です。

※上図のNormalが普通の腹直筋です。Diastasisのほうが裂けた状態です。
妊娠中、特に妊娠後期になると赤ちゃんが大きくなり、お腹が前にせり出してきます。こんなに皮が伸びるもんなんだ、と感心する一方で、体内ではどのようになっているのかは想像が難しいです。
実は、妊娠後期にお腹が大きくなるために、腹直筋の縦の中心ライン(白線と呼ばれる中心の腱部分)が裂けるのです。これが「腹直筋離開 Diastasis Recti」と呼ばれるものです。
この「腹直筋離開」がぽっこりお腹の正体です。もちろん、弱ってしまった腹部の筋肉のせいもありますが、お腹を包んでいる腹筋が裂けしまうのです。そのせいでお腹は横に、そして前に広がろうとするのです。

〇 腹直筋離開の原因
妊娠中、以下の要因が複合的に作用して腹直筋離開が起こりやすくなります。
子宮の増大:胎児の成長とともに子宮が大きくなり、腹部が膨らむことで腹直筋が横方向に引き伸ばされます。
ホルモンの影響:妊娠中に分泌されるリラキシンやエストロゲンといったホルモンにより、全身の靭帯や結合組織が緩みやすくなります。白線もその影響を受け、柔らかくなります。
筋力の低下:妊娠前から腹筋が弱かったり、姿勢が猫背になっている場合も、腹部に横方向の力が加わりやすく、離開が起こりやすくなるとされています。
分娩時のいきみ:出産時のいきみも腹部に大きな負担をかけます。
その他:高齢出産、多産、帝王切開での出産などもリスク要因として挙げられます。
〇 腹直筋離開の症状と影響
腹直筋離開は、見た目の問題だけでなく、身体に様々な影響を及ぼす可能性があります。
ぽっこりお腹:産後数ヶ月経ってもお腹が引っ込まない、下腹部がぽっこり出る。
お腹のくぼみや膨らみ:仰向けに寝て頭を起こしたときに、お腹の真ん中に縦の溝ができたり、逆に内臓が盛り上がって膨らんで見えたりすることがあります。
体幹の不安定さ:腹部の筋肉が本来の機能を果たせないため、体の土台である体幹が不安定になります。
腰痛や恥骨痛:体幹が不安定になることで、腰や骨盤に負担がかかり、腰痛や恥骨痛を引き起こしやすくなります。
姿勢の悪化:体幹の弱化により、姿勢が崩れやすくなります(猫背など)。
臓器下垂:内臓を支える力が弱まり、臓器下垂のリスクが高まります。
骨盤底機能不全:尿漏れ、便漏れ、ガス漏れ、骨盤臓器脱、骨盤痛、性交痛などの症状が出ることがあります。
臍ヘルニア(でべそ):臍の周りの腹壁が弱くなり、臍が飛び出すことがあります。

腹直筋が離開していると、腹圧が中心の裂け目から抜けて、このように中心が盛り上がる形でお腹が膨れます。

自分で簡易検査をしてみましょう!
⑴ 仰向けに寝てください。
⑵ 首だけ持ち上げておへそを覗き込むようにします。
⑶ おへその上あたり、ちょうど左右の真ん中のラインに指を入れてみてください。

ずぼっと入れば腹直筋は裂けています。
【簡易評価】
1横指:あまり裂けていません
2横指:裂けています
3横指:かなり裂けています
裂けたままだとお腹はぽっこりのままになりかねません。お腹の皮がびろ~んと伸びた状態になるからです。腹圧もうまく調節できません。
体内では子宮が大きくなり赤ちゃんを包んでいました。そして、出産後に子宮は収縮を始めます。子宮復古の始まりです。
しかし、腹部の筋肉はそのままなのです。ほおっておけば収縮がうまくできないままの方もおられます。すると、ぽよんとしたたるんだお腹になってしまうのです。これは子供を生めば生むほど、この傾向になって戻りにくくなります。
この腹筋の裂け目は少しやっかいなのです。
みなさんはお腹が出ているからと、産後に懸命になって「腹筋運動」をされます。10人中9人以上が「仰向けに寝て起き上がる運動」をされます。手は頭を支えながら、頭、肩、背中の順に浮かしていく運動です。英語では「クランチ crunch」と言います。

ところが、この運動は「ぽっこりお腹を悪化」させることがあります。他にも悪化させる運動はたくさんありますが、これを産後に行ってしまう方が非常に多いのです。悪化させる運動はヨガやピラティスにもたくさん含まれています。

また、最近はSNSやYouTubeなどで「腹直筋離開のためのエクササイズ」の動画を上げている方がたくさんおられます。
ところが、研究レベルでの現段階では、有効なエクササイズのコンセンサス(意見の一致)が取れていません。
つまり、研究レベルではまだ効果的なエクササイズが分かっていないのです。世界中に出ている腹直筋離開の論文の数は、肥満によるものも含めてたったの355程度ですのでまだまだ研究が不足しているのです(2027年2月現在)。
当院では最新研究の論文に目を通して、生の研究レベルの情報、つまり患者さんにお一人おひとりの状態をきちんと考慮して、臨床を組み立てております。
「腹直筋離開にはこの運動!」のように決まったものは存在しないのです。
さらに、エコーを使って一人ひとりの腹部筋の活動状態をチェックしていますので、ダメな運動、良い運動が分かります。ご安心ください。

研究者の意見が分かれるのは、産後ママの個体差を考慮に入れていないからです。腹直筋離開部の離開幅だけを見て、産後ママさんの体幹筋の使い方の癖を考慮に入れず、単一エクササイズの効果を調べても、矛盾する研究結果が出るのは当然です。
ですから、当院では「お一人お一人の体幹筋の癖を正確に把握してから、エクササイズをご提案」しています。
「どれくらいの幅や長さで裂けているのか」また「その重症度」を検査で判定します。検査ではおひとりおひとりの腹筋活動の状態を可視化してご説明します。そして、あなたにぴったりのエクササイズをご提案します。一律で皆さん同じエクササイズではありません。

さらに、産後ケアセッションにて悪化をさせない「産後のお腹専用のエクササイズ」でこの腹筋離開を元に戻すようにします。このような取り組みを当院では行っております。

当院の施術やエクササイズは世界中からの研究論文によってエビデンスが支えられています。
産後の腹直筋離開に対する施術やエクササイズが、特に腹直筋間距離(IRD)の減少に効果をもたらす可能性があることを示しています。
特に、腹筋トレーニングや、深層の体幹筋をターゲットにしたエクササイズ(ドローインやコアスタビリティエクササイズなど)が推奨される傾向にあります。
しかし、注意も必要です。人により、推奨されているものが、逆に悪化を引き起こしかねないのです。
ですから、ひとり一人違うのに、腹直筋離開のエクササイズはこれ!といった当てはめることはしません。当院では個々のケースで、その方に最適の施術やエクササイズを選ぶことから始めます。
【参考論文(一部を紹介)】
1) Impact of postpartum exercise on pelvic floor disorders and diastasis recti abdominis: a systematic review and meta-analysis
5) Use of Exercise in the Management of Postpartum Diastasis Recti: A Systematic Review
8) Effects of conservative approaches for treating diastasis recti abdominis in postpartum women: a systematic review and meta-analysis(2025/Medicine)
この論文では「腹直筋離開に対して、保存療法としての腹筋運動は IRD を改善する可能性がある」と結論づけられています。ただ、サンプル数と他の方法との比較、期間が少ないため、個人的に改善したというような個々の体験談に近いと判断されています。
しかし、このようなエクササイズや腹部EMS刺激の効果がある人がいるというのは示唆に富んでいると思われます。
14) Effect of hypopressive exercises vs conventional abdominal exercises on DRA(PLOS ONE)
15) Neuromuscular electrical stimulation and strength recovery in DRA (RCT)(Ann Rehabil Med)
16) Diastasis recti abdominis rehabilitation in the postpartum period(Springer)
17) Preliminary study of Kinesio Taping in rectus abdominis separation
ここまで見てきてお分かりかと思います。
研究段階でも不確かなのです。SNSでいろんな人が「治る!」とか「改善できる!」とか言うのは、そもそも間違ったメッセージです。注意してください。
なぜなら、これらの研究に共通する欠点は、方法や評価、期間がバラバラで標準化できないからです。
標準化とは、みんな一律でこの方法でこれくらいの期間、適用すればこれこれの効果が得られる、というものです。
ですが、そんなものはもともと存在しないのです。
人はそれぞれ違います。ですから、個々の状態を観察して、どの方法が一番合っているのかを見極められる施術者のほうが重要になってくるのです。
産後の腹直筋離開に悩む場合は、やはり専門的な知識を持つセラピストに相談し、個々の状態に合わせた適切な評価と指導を受けることが最も重要です。

当院では最新のデータに基づいて、お一人お一人に合わせた改善プランをご提案いたしております。
続々改善されるママさんが当院をご卒業されていらっしゃいます。

腹直筋離開
エコーでしっかりと確認していただいて、筋肉がどうなっているのか細かく教えていただいたので、症状がだんだんと縮まっていく成果もとても分かりやすくて実感できたので良かったです。通っていくうちに、確実に縮まっていき良くなっていくのがとても楽しみでした。ユーチューブなどで独自にトレーニングをした事もあったけれど、やっぱり成果が出なかったので、もみの木整骨院で診ていただいて、トレーニングの仕方など正しい知識も教えていただいたので、とても成果が出て、本当に通って良かったなと思いました。よりそって診療していただいて本当にありがとうございました。
※あくまでも個人のご感想です。
みなさんにお願いがあります。
ちゃんとした知識のある治療院へ行ってください。
現状ではほとんどの柔道整復師や鍼灸師、理学療法士など国家資格を持っていても、産後のケアについての知識は持ち合わせていません。それでも「産後の骨盤矯正」といった安易なキャッチコピーで宣伝しています。
みなさんが手に入れたい姿勢や身体は、慰安的な一時的なものではないはずです。1年、3年、5年、10年後もちゃんとした姿勢、痛みのない体を維持したいとお考えのはずです。そのためには、延々と治療院や整骨院等の医療機関に通うのではなく、ご自身で知識を身につけて、日頃から意識して姿勢を取ることが一番の健康維持になるのです。
ですので、当院では産後ケアセッションという機会を通じて、皆様に本当に健康で美しい体になる方法をご提供しているのです。

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