【遅延型フードアレルギー】第4回 IgG高値=アレルギー?

04 IgG高値=アレルギー?

第4回 IgG高値=アレルギー?

食物特異的IgG検査を受けると、卵、牛乳、小麦、大豆、ナッツなど、普段よく食べている食品に高い数値が並ぶことがあります。

結果表には赤や黄色で反応の強さが示され、「こんなにたくさんの食品にアレルギーがあったの?」と驚く方も少なくありません。

反対に、医療機関で相談すると、

「IgGは食べたことがあるという記録にすぎません」
「IgG検査は意味がありません」

と説明されることもあります。

では、どちらが正しいのでしょうか。

現在の研究から最も誠実に答えるなら、

「IgGが高いというだけでは、その食品が症状の原因だとは診断できない。しかし、特定の症状を持つ人において、IgGを参考にした除去食が役立つ可能性まで否定されたわけではない」

となります。

今回は、IgGが何を示しているのか、なぜ学会は診断への使用を推奨していないのか、それでも除去食研究で改善が報告されるのはなぜかを、少し丁寧に整理します。

IgGは「食べ物を攻撃する抗体」とは限らない

IgGは、私たちの血液中に最も多く存在する抗体です。

細菌やウイルスへの防御に関わる一方、日常的に摂取する食品たんぱく質に対しても作られることがあります。

食べ物に含まれるたんぱく質は、消化管の中ですべてが完全にアミノ酸へ分解されるわけではありません。ごく一部はペプチドや抗原性を残した状態で免疫系に認識されます。

そこで食物特異的IgGが作られたとしても、それだけで異常とはいえません。

むしろ、普段から食べている食品に対してIgGが検出されることは、身体がその食品に接触してきた証拠とも考えられます。

特にIgG4という種類は、繰り返し抗原へ曝露されたときに増えることがあり、IgEによるアレルギー反応を抑える「免疫寛容」と関連する場合もあります。

実際、食物アレルギーの経口免疫療法でも、治療経過に伴って食物特異的IgG4が増加することがあります。

したがって、

「IgGがある」
↓
「免疫が食品を敵と認識している」
↓
「その食品が炎症や症状を起こしている」

と、そのまま結びつけることはできません。

IgGとIgG4は、同じものではない

IgGには、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4という四つのサブクラスがあります。

市販されている食物反応検査も、すべてが同じものを測っているわけではありません。

総IgGを測る検査もあれば、IgG4を中心に測る検査、複数の抗体や補体反応を組み合わせる検査もあります。使われる食品抗原、加熱の有無、抽出方法、陽性とする基準値も検査会社によって異なります。

欧州アレルギー・臨床免疫学会の声明で、診断への使用が明確に推奨されていないのは、主として食物特異的IgG4検査です。

カナダ臨床免疫・アレルギー学会は、より広く食物特異的IgG検査について、陽性結果は食品への曝露や免疫寛容を反映することがあり、食物アレルギーや食物不耐症の診断には使用できないとしています。

ただし、ここで重要なのは、「診断に使用できない」と「研究上も臨床上も何の情報も持たない」は同じではないということです。

「遅れて出る反応」=IgG反応ではない

食べてすぐにじんましんや呼吸困難が起こるIgE型食物アレルギーに対して、数時間後から数日後に症状が現れるものを、一般に「遅延型フードアレルギー」と呼ぶことがあります。

しかし、医学的には「症状が遅れて出る」という時間的な特徴と、「IgGが原因である」という免疫学的な仕組みは分けて考える必要があります。

非IgE型の食物アレルギーには、主にT細胞などが関係すると考えられている病態があります。好酸球性消化管疾患のように、複数の免疫反応が関与する疾患もあります。

そのため、症状が翌日に出たからIgG型である、IgGが高いから遅延型アレルギーである、とは判断できません。

遅れて現れる頭痛、腹部膨満、だるさ、肌荒れ、関節痛などには、免疫反応以外にも、発酵性糖質、乳糖不耐、ヒスタミン、食品添加物、血糖変動、腸内発酵、睡眠不足などが関係する可能性があります。

IgGが炎症を起こす可能性は、まったくないの?

ここは、学会声明だけを読むと見えにくい部分です。

IgGは抗原と結合して免疫複合体を作り、条件によっては補体系や免疫細胞を介して炎症へ関与する可能性があります。

腸管バリア機能が低下し、十分に分解されていない食物抗原が通常より多く免疫系へ届けば、食物特異的IgGが増えるのではないか、という仮説もあります。

この仕組み自体には、免疫学的な妥当性があります。

しかし、市販の食物特異的IgG検査で高値が出たことだけでは、

その人の体内で病的な免疫複合体が作られていること、補体が活性化していること、その反応が頭痛や腹部症状を起こしていることまでは証明できません。

検査が測っているのは、基本的には「血液中の抗体が、検査用の食品抗原へどの程度結合したか」です。

実際の身体で起きている消化、腸管通過、免疫複合体形成、組織への影響までを直接見ているわけではありません。

「起こり得る仕組み」と「この人に実際に起きていること」は、分けて考える必要があります。

それでも、IgG除去食で改善する人はいる

では、IgG検査の結果に従って食品を除去し、症状が改善したという報告は、すべて思い込みなのでしょうか。

そう言い切ることもできません。

片頭痛や過敏性腸症候群を対象とした研究では、IgG陽性食品を除去した群で、頭痛や腹部症状が改善したという報告があります。一方で、研究によって結果は一致せず、参加者数が少ない、食事内容を完全に隠せない、除去した食品数が群間で異なるなどの問題もありました。

注目されるのが、2025年に医学誌「Gastroenterology」に掲載された過敏性腸症候群の多施設研究です。

この研究では、238人をIgG検査に基づく除去食群と、別の食品を除去する偽介入群へ無作為に振り分け、8週間比較しました。

解析対象となった223人のうち、腹痛が30%以上減少するという主要評価項目を達成した人は、IgG除去食群で59.6%、偽介入群で42.1%でした。

これは、IgGを参考にした食事が、少なくとも一部の過敏性腸症候群患者に役立つ可能性を示す結果です。

ただし、この研究で使われたのは、過敏性腸症候群向けに選ばれた18食品の専用検査です。数十から百種類以上の食品を測る一般的なIgGパネルすべてに、そのまま結果を当てはめることはできません。

また、観察期間は8週間であり、長期的な安全性や再導入後の経過は十分に分かっていません。研究は検査メーカーの資金提供を受け、研究設計とデータ収集にも企業が関わっていました。

企業資金による研究だから誤りということではありませんが、独立した研究による再現が必要です。論文の著者自身も、さらに大規模な検証が必要と結論づけています。

したがって、この研究は「IgG検査がアレルギーを診断できる」と証明したものではありません。

示されたのは、「特定のIBS患者に、特定のIgG検査を用いて選んだ食品を除去すると、偽介入より腹痛が改善した」というところまでです。

なぜ改善したのかは、まだ一つに決められない

IgG陽性食品を除去して症状が改善した場合にも、複数の説明が考えられます。

本当に食品抗原と免疫反応が関係していた可能性があります。

一方で、IgGが高い食品は普段よく食べている食品であることが多いため、検査が「食事への曝露量」を通して、症状を起こしやすい食品を間接的に拾った可能性もあります。

たとえば、小麦のIgGが高い人が小麦を除くと、パン、菓子、麺類、加工食品が減ります。その結果、発酵性糖質、食品添加物、血糖変動、食事量などが変化し、症状が改善することも考えられます。

牛乳を除けば、乳糖や脂質の摂取量も変わります。卵や大豆を除けば、同時に食べていた調味料や加工食品も変わるかもしれません。

つまり、除去食で改善したことは臨床的に大切な事実ですが、それだけで「IgG抗体が症状を起こしていた」とまでは証明できないのです。

検査結果は「診断書」ではなく「仮説リスト」

食物特異的IgG検査を使うのであれば、結果表を「食べてはいけない食品の一覧」として扱うべきではありません。

現実的には、症状との関係を調べるための仮説リストとして使います。

数値が高い食品の中でも、普段の摂取頻度、食べる量、症状が起こるまでの時間、過去の食事記録などを照らし合わせ、関係が疑われる食品を絞ります。

そして、栄養状態を損なわない範囲で一定期間除去し、症状が本当に変化するかを記録します。

改善した場合も、そこで「一生食べられない」と決めるのではなく、安全性に問題がなければ、一食品ずつ再導入して症状が再現するかを確かめます。

除去しても変化がなければ、その食品を避け続ける根拠は弱くなります。

逆に、検査値が低くても、食べるたびに同じ症状が再現する食品は、検査結果だけで無関係とはいえません。

検査値よりも、除去と再導入による症状の再現性のほうが、実生活では重要な情報になります。

IgG陰性でも「安全証明」にはならない

IgG検査は、即時型食物アレルギーの安全確認には使えません。

IgGが陰性であっても、食物特異的IgEによるアレルギーを否定することはできません。検査結果を見て「この食品は陰性だから大丈夫」と自己判断するのは危険です。

過去に、喉の腫れ、呼吸困難、全身のじんましん、意識が遠のく、繰り返す激しい嘔吐などがあった方は、IgG検査の結果にかかわらず、アレルギー専門医へ相談してください。

また、小麦を除去する前には、セリアック病などの検査が必要になる場合があります。先に長期間小麦を避けると、検査結果へ影響する可能性があるためです。

高値だから悪い、低値だから安全、ではない

食物特異的IgG高値は、少なくともその食品抗原を免疫系が認識していることを示します。

しかし、それが免疫寛容を反映しているのか、摂取頻度を反映しているのか、腸管バリアの状態と関係しているのか、症状に関わる反応なのかは、検査値だけでは決められません。

だからといって、すべてを「食べた記録にすぎない」と片づけるのも、現在の介入研究を考えると少し乱暴です。

大切なのは、

IgG高値をアレルギーの確定診断にしないこと。

一方で、症状と食事の関係を調べる仮説として使う可能性までは閉ざさないことです。

神戸市北区のもみの木治療院では、検査結果だけで食品を一律に禁止するのではなく、普段の摂取量、症状の時間経過、胃腸、便通、睡眠、血糖、自律神経、栄養状態などを機能性医学の視点から整理します。

鍼灸院で食物アレルギーを診断することはできませんが、三田市周辺で慢性的な腹部膨満、頭痛、だるさ、肌荒れなどに悩み、食物特異的IgG検査を受けるべきか迷っている方や、検査後に「何を食べればよいか分からない」と困っている方が、情報を整理するお手伝いはできます。

食べられないものを増やすためではなく、本当に関係する食品を絞り、最終的には不要な制限を減らすために検査や除去食を利用することが大切です。

次回は「リーキーガットで反応が増える?」です。

腸管バリアの状態が崩れると、食物抗原への曝露やIgG反応は増えるのでしょうか。リーキーガットと食物反応の関係について、分かっていることと、まだ仮説の段階にあることを整理します。

参考文献

・A Novel, IBS-Specific IgG ELISA-Based Elimination Diet in Irritable Bowel Syndrome: A Randomized, Sham-Controlled Trial.

・CSACI Position statement on the testing of food-specific IgG.

・Testing for IgG4 against foods is not recommended as a diagnostic tool: EAACI Task Force Report.

・IgE and IgG Antibodies as Regulators of Mast Cell and Basophil Functions in Food Allergy.

・Mechanisms of Oral Tolerance.

・Diet restriction in migraine, based on IgG against foods: a clinical double-blind, randomised, cross-over trial.

・Randomised controlled trial of food elimination diet based on IgG antibodies for the prevention of migraine like headaches.

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